南房総以南では塩害対策が必須にも関わらず海沿いの別荘地が人気だ。
一方で、緑豊かで長閑な山側の土地はあまり見向きされない。
そんな中、周囲を緑で囲まれたプライベート感たっぷりのこの敷地はとても良い環境だと思った。
敷地は平坦だが、南方には南房総特有のマテバシイの巨木があり、その西側は遠くの山と空まで視線が抜ける。
この借景を活かした計画とすれば、自ずと隣家との距離を保つことができ、互いに気を遣う事もなさそうだ。
細長い敷地では、手前は駐車場及びアプローチスペース、奥に建物を配置することで、 完全にプライバシーが保てるように配慮した。
室内に足を踏み入れれば、お庭につながる土間空間が人々を向かい入れる。
この空間はただ通るだけの「通路」ではなく、 薪ストーブで暖をとり、自然とそこに人が集まるような「居場所」となると同時に、 体温調節が苦手な犬猫のための「拠り所」でもある。
また、天井の高い土間空間では、夏は涼しく、冬は暖気を奥へと運ぶ機能も有する。
奥に進むに従い段階的に床レベルを上げていくことで、よりこもった内向きの空間となる。
広いリビングでは皆で団欒するのもよし、各々が好きな使い方をするのもよし。
最奥のダイニングでは料理をしながら会話を楽しみ、 そのまま隔たりのないリビングや土間で食事をするのも良い。
一つの大きな空間ではなく、緩やかに繋がりながらも建築的な仕掛けにより個々の居場所を設た住宅(貸別荘)の提案である。