野沢の家
Nozawa house
東京都世田谷区野沢猫と季節をともに暮らす、都市の静寂
この家づくりは、世田谷内での土地探しから始まった。
施主ご夫妻と共に数多くの土地を訪ね、ひとつひとつにプランを入れながら丁寧に可能性を探るうちに、ご夫妻が本当に求めている暮らしの輪郭が徐々に浮かび上がってきた。
それは、2匹の愛猫との穏やかな日々、大切な家族とのかけがえのない時間、季節の移ろいをそっと感じ取れる豊かさ、そして開放感のある、けれどもプライバシーの守られた空間。
そうしたいくつもの願いが重なり合い、ようやく出会えたのが、世田谷区の中心から少し離れた住宅街の一角にあるこの敷地である。
計画にあたっては、建物のボリュームを敷地いっぱいに配置した。
周囲には住宅が迫っていたため、外部に対して無理に開くのではなく、開口部の面積を適度に抑え、その分、内部に中庭や吹き抜けを設けることで、平面・断面ともに奥行きとメリハリを持たせた。
閉じながらも豊かに開かれた構成が、この住まいの骨格となっている。
外部からの視線に対しては、コンクリート打ち放しの目隠し塀を設け、生活の安心と落ち着きを守りつつ、閉塞感を与えないよう高さや配置に細やかな配慮を重ねた。
その一角に設けた「猫のお留守番窓」は、家の内と外をゆるやかにつなぎ、猫たちが顔を覗かせるたびに、家全体がやさしい表情を見せる。
軒下のガレージには2台分の駐車スペースを確保。
玄関をくぐると、吹き抜けのエントランスホールと印象的な階段が、訪れる人を迎える。
階段の段板がそのままキャットウォークへとつながり、猫たちが自然に暮らしの風景に溶け込む。
単なる装飾ではなく、建築と一体化した設えである。
1階は寝室・書斎・WIC・水まわりなどのプライベートな空間で構成され、中心には中庭を設けた。
猫たちが越えられない高さのウッドフェンスに囲まれた中庭は、書斎や寝室から視線が抜け、自然の光と風を柔らかく取り込む場所となっている。
植栽は四季の変化を楽しめるよう、イロハモミジなどを中心に構成。
在宅勤務もする奥様にとって、季節を身近に感じながら過ごせるこの中庭は、日々の気持ちにゆとりをもたらす。
廊下の突き当たりにも緑を設け、家の奥まで自然の気配を届けている。
2階にはLDKと和室(ゲストルーム)、そしてご主人の書斎を配置。
1階の書斎と中庭を挟んで向かい合うかたちで、空間に視線と気配の連続性を持たせた。
LDKは高い斜天井と吹き抜けの上部に特注のサッシを設けることで、隣家の屋根の上に窓が浮かび、視線が空へと抜けるような伸びやかな開放感を演出している。
ダイニングに座ると、中庭に面した大きな窓から光と緑が差し込み、リビングの吹き抜けとつながって、心地よい開放感が広がる。
その空間を静かに見守るように、猫たちはキャットウォークの高所から、ご主人や奥様の動きを眺め、気配を交わしている。
キッチンは、見た目の美しさだけでなく、使い勝手にも徹底的に配慮した。
壁面収納にはスライドイン式の扉を採用し、炊飯器や電子レンジなど、生活感の出やすい家電を視線から隠せるように設計。
ウォーターサーバーは水道直結とし、建築段階から計画することでその存在感を最小限に抑えた。さらに、吊り戸棚の奥まった位置にはキッチンペーパーを組み込み、目立たず、すぐに取り出せる工夫も施している。
猫たちが自由にくつろぎ、人が自然と対話しながら静かに暮らす。都市の中にありながら、深呼吸のできる住まいがここにある。
建物概要
主要用途:専用住宅
構造:木造軸組構法
規模:地上2階
写真:鳥村鋼一 / イエフォト / SALab.








photo/SALab.


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