南房総リノベーション-2
Minamibouso renovation-2
千葉県南房総市眺望を住まいに取り込む、二地域居住のためのスケルトン改修
本計画は、鉄筋コンクリート造マンションのスケルトン改修である。
東京で平日を過ごす家族が、週末になると車でおよそ90分の内房の海辺へ向かう。その二地域居住の拠点となるセカンドハウスだ。
海水浴場の正面に立ち、釣り好きの建主にも、遊び盛りの子どもたちにも、この上ない環境が広がっている。
「気がつくと、つい海を眺めてしまうんです」施主の言葉通り、リビングから望む穏やかな内房の海と、水平線に浮かぶ富士山の姿は、都市では得難い静けさをもたらし、まさにセカンドハウスの理想的な舞台である。
私たちが最初に注目したのは、バルコニー側の既存サッシまわりの納まりだった。
共用部であるため改修はできないものの、サッシの高さが低く、その上に大きな垂れ壁がかかる構成は、せっかくの眺望を不自然に分断していた。
この違和感を建築的に解消するため、サッシ四方をウォールナットで額縁のように囲い、さらに天井・壁の仕上げをサッシの縁へ向けて斜めに絞り込んだ。
これにより、入室した瞬間、視線が自然と海へ導かれていく。あえて小上がりを設けたのも、ただの動線だった場所を、海を眺めるための「居場所」へと変えるためである。
リビング脇の腰窓も、この住まいの大きな特徴だ。
海から裏山までを一望できる、三方向に開くコの字型の水平連続窓。
その包まれるようなパノラマ感を引き出すため、こちらも窓に向かって天井を斜めに落としている。一般的なソファでは視線が低く眺望を生かしきれないため、サッシ下端と同じ高さで背もたれを揃えたウォールナットの造作ベンチを設え、窓際すべてを"海を楽しむ居場所"とした。
一方、リビングから山側を覗くと、天井中央に低い梁型が現れ、手前と奥の空間を静かに分節している。
手前は手前で独立した勾配天井を持ち、奥の勾配天井とは連続しない。奥側は頂点が視界に現れない構成とすることで、空間がその先へ続いていくような深い奥行きを生み出している。
異なる勾配天井の組み合わせが、それぞれの領域に固有のリズムと表情を与え、視線の向かう方向を穏やかに切り替えていく。
また、施主がミッドセンチュリーを好むことから、内装には無垢材・ガラス・タイルといった素材を随所に取り入れている。
素材同士の対比や素朴な質感を尊重しつつ、過度に装飾しない簡潔なディテールと、水平・斜めのラインを基調とした構成は、ミッドセンチュリーの思想を現代的に再解釈したものだ。素材がまとう誠実な手触りが、海辺の穏やかな風景とも呼応している。
近年、二地域居住を選ぶ人々が増え、セカンドハウスには大きなワンルーム空間が求められることも多い。しかし本計画では、四季や時間帯で移り変わる風景と、家族の過ごし方を重ね合わせ、多様な「居場所」を点在させる構成とした。
非日常の中でこそ、その時々に心地よく感じる居場所を自分で見つけられる住まいがいい。
便宜的な機能だけではなく、心に触れる設えが、ここで過ごす時間を豊かに育ててくれると私たちは考えている。
建物概要
主要用途:集合住宅
構造:鉄骨鉄筋コンクリート造
規模:地上11階の内の2階部分
写真:鳥村鋼一 / SALab.






























