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いすみの家

Isumi house

千葉県夷隅郡岬町

千葉県はサーフィンオリンピック会場にほど近くの敷地に建つ、子世帯(親子3人)と親世帯(母親)の二世帯による二地域居住のための住宅である。
二地域居住者=デュアラーという言葉が世に徐々に浸透してきているが、平日は東京で共働きの夫婦だが、週末には、子供を連れてここ外房での暮らしを楽しみに、東京から90分ほどの千葉県外房に足を運ぶ。

クライアントのご主人の趣味は釣りであり、歩いて行ける距離に絶好の釣りスポットがある。 一方、親世帯である母の趣味は木工細工であり、一人で作業に没頭できるアトリエ空間を造りたいというのが、かねてよりの要望だった。
そんなクライアントが選んだ敷地は、敷地中央で2mの高低差のある南下がりの雛壇状敷地であった。
前面道路のさらに南側には市管理の水路(池)があり、そこへの眺望が抜ける気持ちの良い敷地である。
国道から近い一方で、周囲を山に囲まれた地形柄、道路からの喧騒は程遠い。
夜ともなれば、家の明かりだけが周囲を照らす、そんな敷地である。
我々はそんな敷地に対し、必要以上の造成工事や自然を建築物で覆ってしまうような建物は似つかわしくないと考えた。
そこで、敷地の高低差に影響のないラインで素直に基礎を築造し、建物の接地レベルを上げ、さらにウッドデッキを法上ギリギリまで伸ばす事で南側の池への視覚的な広がりをもつくった。
また、建物プランを特徴付けているものの一つに、エントランスドアを開けてからの奥まで抜ける通り土間の存在がある。
この通り土間は、子世帯、親世帯を適度に分設するためのバッファーゾーンであるが、廊下正面の窓を積極的に開ける事で、前面の池を駆け上がってきた空気が気持ちよく通り抜け、家中の空気が巡り、世帯感のヒエラルキーが緩やかに溶け合う。
内部には一尺間の現し垂木を均等に配置しているが、内部から外部、1階から2階への視覚的な広がりに加え、世帯感をまたぐ仕上げの密度に差を付けない事で生まれるタイポロジーに期待したものである。
近い将来、フォーカルポイントにするべく、通り土間の突き当たりには、シンボルツリーを植える計画もあり、楽しみである。
この通り土間の存在が、世帯感の程よい距離感と一体感を内包し、互いに寄り添い合う住まいのきっかけとなる事を願っている。




建物概要
主要用途:別荘
構造:木造軸組構法
規模:地上2階
写真:鳥村鋼一

category: 二地域居住・セカンドハウス / 住宅